先日、ある3階建てのマンションの施工に同行しました。1フロアーに3部屋で合計9世帯が住んでいました。住民の皆さんは、アジア各国の人々で、サリーを着ている人もいれば、中国語も、韓国語も、その他の人々もいらっしゃるわけです。

このマンションの一階の中央の部屋に、唯一の日本人が住んでいました。男性の独居老人ということで、隣の自宅に住んでいる家主もここ3ヶ月ぐらい目撃していないので、生死の程が確認できていない。というのです。不思議に思って家賃の支払いは?と余計なことまで家主に聞いてみたら、遠方の住んでいるご子息さんが振り込んでくるので、老人本人には接触する機会が少ないというのです。

ベランダは色々の荷物が積み上げられ、どこを触ってもナダレが起きそうな状況ですし、ご本人の許可なく触れないので、生死不明の部屋に声をかけ、本人の承諾を取ってから室内のネズミの状況について検証をしなければならないと考え、突入することにした。

特攻隊体長は、弊社の経験8年目の当該物件責任者。ドアを開けるなり、明らかにビビッている。腰が引けている。昼なのに暗い室内に懐中電灯の光を入れながら、見渡してみると高さ70センチぐらいの高原状態に荷物が積み上がっていて、人が通れるような道のない高原で、その奥地に人間が住んでいる様子がないのです。ただ、何ともいえない悪臭レベルの臭いがするのです。

我々の懐中電灯はプロ用ですから、実に明るくて部屋の奥の壁にスポットライトが浴びているように、直線状に光の筒が走っています。暗い部屋です。午前11時とはとても思えません。

玄関で尻込みしていて一歩も前に進まない社員に対して、私が後ろからそこに居てもしょうがないから、入らなければと促すと、「靴は脱ぐんですか。」と聞いてきました。私も返事に困って、室内を改めて細かいところまで見てみるとホコリだらけ、ダニの大量な生息が間違いなく、「脱がない方が安全だな。」と答えた瞬間でした。

弊社社員が「出た!!!」と叫びました。懐中電灯の光を奥の一点に重ね合わせてみると、荷物の間から、ニョきっと丸いモノが下から出てきています。頭でした。生きていたのです。「出たっ。」という言葉は、「いらっしゃった。」の間違いでした。

靴も脱がず、玄関から見える範囲だけでも、数十個のネズミのフンがそこらじゅうにありますし、部屋に入ることなく、ベランダに立ち入る許可を得て退散いたしました。

後で分かりましたが、ベランダのガラス戸は、割れたままで開放状態になっていたのです。そして、その部屋の天袋が開いていて天井裏に侵入し、構造躯体に侵入し、隣の部屋へ、そして、パイプスペースから上下の部屋へと生息するエリアが広がったようです。

お元気で何よりでした。それにしても施工予定日の連絡がつかない。約束は守らない。無法地帯のような人々が約半分でした。家主様もお疲れ様でした。