最近、珍しく清々しいニュースに接した。
大雪のために一昼夜にわたって、立ち往生したままの車列。
そんな状況下の某サービスエリアで、山崎製パンの配送車両が居合わせた。
そのドライバー氏は、そんな状況下でトラックに車載していたパンを渋滞で腹をすかして困っていた周囲のドライバー達に、「どうぞ」と無料で配布したというのである。
会社の許可を取ったかどうか、などの詳細な情報は報じられていない。
もし万が一、会社の承諾なく勝手なことをしたと指摘されれば、全額を弁済しなければならない可能性もゼロではない。
最悪は、全額弁済という事態を意識の中におきながら、提供することに踏み切ったとすれば、丹力のある太っ腹な話しである。
事態は、情報のパーソナル化という時代の流れに乗って、怒涛のように拡散し、一大ニュースとなった。
ドライバー氏は、自身の行動がニュースになって、結果的に『山崎製パンのアンパンマン』として報じられる状況を予想したであろうか。
私がドライバーだったら、会社に連絡して許可を得たであろうか。
今回のケースでは、会社の了解があったのかどうか。
もし、会社の許可がなかったら、ドライバーはどうしたであろうか。
もし、私が山崎製パンの社長という立場だったら、どうしたであろうか。
広報の担当者は、どんな記者会見をするであろうか。
個人の行動という範囲で回答するのか、会社として許可した行動だったのか、会社として実施したとすれば、どうしてこの1台だけなのか。
この日の晩のウォーキングは、マスコミ各社の記者に囲まれているような広報担当者としてのコメントを必死に考えていた。
そのウォーキングの最中に明日のパンを買ってないことに気が付き、コンビニに立ち寄って購入しようとしたら、商品の配送が遅配しているため欠品です。という旨の張り紙があった。
このコンビニに到着するはずだった商品を配給してしまったのか、と一瞬連想したが、関東の相当に広いエリアでコンビニ各社において、欠品は発生したらしい。
その体験から、広報担当者としては、「一部の地域には配送の遅延が発生しており、誠に申し訳ない状況です。」という加盟店などへのお許しを請う表現があるなと予測した。
翌日のマスコミ各社へのコメントとして、私の考えた加盟店様への配慮、広範囲において商品が遅延し、お待ちの消費者に対するコメントとしては、必ず発表の一部に案内されると読んだ。大当たりだった。
予てより山崎製パンとしては、東日本大震災の際にも、同様の炊き出しなどを実施した経験がある、とのことだった。
ドライバー氏も、自分自身の利益ではなく、世間様が困っているから、世間様に貢献したのである。
会社は、ひとりのドライバーよりも遥かに広い、世間様への配慮をにじませた。
とても日本的である。
もし、海外であれば、暴徒化して略奪が発生するのが一般的であり、まぁレベルが良い方だとしても、車両をと止めて消費者に販売してしまうのがアジアの人々の発想だ。
なぜなら、ビジネス・チャンスになるからだ。
我が国のような美談が成立する国など、どこにあるであろうか。
周囲の人々も合わせて、みんなで力を合わせて配給に協力し、奪い合うこともなく、笑顔の輪が広がったと思われる。
清々しい善行であって、本当に気持ちが良いニュースである。
そんな思いで翌日になると会社側のコメントが控えめながら発表された。
それによると、地方の店舗様には、お届けできないエリアも発生していることから、コメントは差し控えたいとか、東日本大震災の際にも同様の行動を取った経緯があるなど、紳士的で控えめながら、宣伝に利用せず謙虚な姿勢が好感となった。
株価まで上昇したというから、本当の意味で社会的な評価となったような気がする。
会社側の姿勢も好感度抜群であるし、ドライバーの行動も称賛に値する。
聞けば、同じサービスエリアでは、他のテナントまでが無償でそれぞれの商品を配給されたそうだ。
ホンマにええ国や。