トヨタで以前に高級車の開発を担当された方から、『高級とは何か』というお話を伺った。
トヨタでは本質的な高級車を開発するために、約1年間にわたって、高級旅館や高級ホテルに行ってみたり、何しろ高級と言う名のつくモノを手当たり次第というぐらい体験した時期があるそうな。
その一例として、後部座席の灰皿のフタの話になった。
ボタンを押すと、灰皿のフタが開く。
このフタ、押した瞬間にパコッと一瞬にしてスピーディーに開いてしまっては高級感がないというのである。
ゆっくりとおもむろにひらく、というタイミングが高級感だそうだ。
機能だけで言えば、パタッとか、パコッという瞬間が優秀であろう。しかし、
高級は機能ではないという話になった。

おもむろ、厳か、たおやか、などという言葉の話になり、日本人の所作とか、礼節と言うものに美意識が無くなった、という話になった。

この後は、昨今の品格シリーズあたり読み過ぎ傾向の話なので、面白くないから割愛するけれど、日本人の所作、日本人の美意識、いずれも大切にしたいと思った。
彼らと食事をした店を出て、歩道を地下鉄の駅に急ぐと、前にはズボンを引き下げた青年が、ガムを噛みながら、スマホの画面に見入って、通行人とぶつかりながら歩いている。
この国は、いつから狂ってしまったのか、原因が分からないと、回復できないような気がする。