最近、賃上げのニュースが盛んになってきた。
トヨタの豊田社長など、「会社の利益を報酬として分配するのは、当然のことだ。」とコメントされている。

政府も安部首相など、賃上げを求めている。
賃上げが実現しないと、個人消費が伸びないのは、理解できる。
しかしだ。
株価が上昇して銀行や保険会社は、利益が出た。
為替は円が安くなって、自動車の輸出など好業績を上げ、収益を出している。
だから、賃上げである。というのである。
株価は証券取引という相場が上がったこと。円安というのも、外国為替の相場が変動したことである。
何となく、一時のバクチで儲けて、利益分配してしまうのと似ていないだろうか。

池田内閣の所得倍増論の時代は、造船が世界一であり、トランジスタ・ラジオから最近のテレビまで、家電が輸出をリードした。自動車も売れまくった。1トン当たり500円程度の鉄鉱石を輸入し、1台250万円程度の車にして付加価値を付けて輸出した。いわゆる加工貿易が実需に基づく利益を確保して、国は急成長して豊かになった。だから、所得も増加し、経済成長できた。

しかし、造船は撤退し、半導体やテレビなども、韓国や中国にやられ、パソコンもアジアにやられて、日本の実需に繋がる国力が無くなっている。
トヨタなどは、感心なことに、「年間300万台の生産だけは、国内に残して国内経済の維持に努力する。」というコメントを発表している。そうでもしないと、工事は全部アジアなどに出て行ってしまう。

そんな実需がなくなって、相場という虚業の世界の浮利を追い求め、浮利を分配しようという虚業大国になってしまった。

賃上げするより、ひとりでも多くの定年から、年金支給までの食い繋ぎに困っている人々を雇用したり、非正規労働者を正社員にしたり、底辺の引き上げを優先するべきではないだろうか。
絞るだけ絞って、勝ち残った勝ち組の昇給だけして、経営者は政府の号令に従った形式を取ったとしても、所詮は稼げる産業を失った状態から脱却できる戦略が必要ではなかろうか。
実需に基づく利益であれば、浮利ではない。
健全な額に汗した利益であり、国力である。
しかし、実需のない、相場の上下動で国の根幹をゆがめてしまうのは危険であると考える。

弊社では、一昨年は63歳を、昨年は56歳を採用している。
企業ができることは、賃上げだけではない。
賃上げでなくても個人消費は伸びる可能性があると言いたい。