最近、ある住宅から現地調査のご依頼を頂いて伺った。

玄関に迎えに出てきた青年は、「どうぞ、どうぞ。」と言いながら、スリッパという室内用のものではなく、明らかにサンダルという屋外用のものを履きながら、我々を家の中に招き入れた。

玄関から2歩~3歩歩くと、靴下がベタベタと感じるし、鼻は異様なネズミの尿の臭いに包まれてしまう。
板張りの部屋には、接着剤が伸びて付着した痕跡がたくさんある。踏むとベタベタという最初の感覚が再び。

息子さんの青年に聞くと、「粘着シートに捕まったネズミが、粘着シートを引っ張りながら逃げ惑った時のもの。」というのである。その接着剤の痕跡だけで20箇所ぐらいある。

壁という壁、随所をネズミが齧って穴を開けて、出てきている。その穴の前には、粘着シートが1枚ずつ置いてある。何十匹生息しているのか、想像も付かない。70匹程度までであれば、正確に当てることもできるが、100匹以上になると、考えたくもない。

どうしてこんな状況なのか、不思議でもあり、勉強になると思いながら、そのお宅の外部に出てみると、建物の基礎のコンクリートが、半分ぐらいないのである。中心部は基礎の上に乗っていても、その後の増築部は、基礎からせり出していて、下が空洞になっている。この部分から床下が自由自在で、出入りが簡単な状況になっている。
懐中電灯を暗い床下に当てると、5匹のネズミが明かりに迷惑そうに動き出した。

靴を持ったまま靴下で車まで行き、靴下を履き替えてから、靴を履き、次の目的地に移動した。
車が動き出すと、通常なら凄いうちですね。いったい何匹生息しているんですかね。完全駆除までどのくらいの期間かな。などという会話が成立するが、この住宅の時だけは、車が動き出しても、誰も何も言わなかった。
全員が後で分かったことだが、何をすれば良いのか。誰が現場担当責任者になるのか。黙りこくってしまった。