ある従業員に、突然聞かれた。「代休は、どうなりますか。」労働者として、予定外の勤務をした場合、代休を求めるのは当然のことだ。
しかし、私の頭の中には、彼の代休はなかった、というより正確に言えば、スケジューラーという担当者がすべての休日や労働をコントロールしているので、私がすべてを管理している訳ではない。
ここまでは、表向きの代表者の見解である。しかし、現実にはネズミ駆除業務というのは、お客様からの突然のご依頼で、スケジュールなんていう概念が成立しないぐらい、ぐちゃぐちゃになってしまうことが少なくない、ではなく、極めて多い。
先日も、全国展開しているファーストフード店の大阪にあるお店で、お客様のバッグに突然ネズミが落ちて来て入ってしまった。お客様からの指摘で本社は大慌て、結果的に従来の業者では止まらないから、ということで、弊社に連絡が入った。
こんな時、代休は?、と聞いてこないスタッフを連れて現場に飛んでいくことになる。このスタッフは、どうせ僕の休みなんて、だれも考えてないですよね。という感覚でいるに違いない。配慮はしているが、充分ではなく、か、半分ぐらいしか報いていないと思われる。

しかし、このスタッフ、完全に腕を上げている。何しろ、色々のケースに遭遇する。行った先々で考えられないようなことが待ち受けている。しかも、ある日突然、準備なく現場に立たされる。
先日もある食品倉庫、1フロアーで7500坪という広さである。巨大倉庫でたった1匹が商品を喰い荒している。この同じ会社、関西の倉庫では侵入したネズミの被害により、毎日バス2台の人員を人材派遣会社に依頼して、早朝から投入し、全商品の段ボール箱を点検しないと出荷ができないとのことで、ネズミが捕獲できず1年間に数千万円を投じたそうだ。
そんな苦い経験が、弊社への緊急出動依頼の背景にある。だから、役員以下幹部社員全員が会議室に集結しており、いつ捕獲できるのか、と詰め寄られる始末である。

医者も初診料が高いけれど、我々の仕事も初期消火のような意味で、現場の状況を理解し戦略と戦術を立案しなければならない。だから、緊急出動を繰り返しているとどうしても実力が向上するのである。
代休君は、緊急出動がない。本人は嬉しいに違いない。休みは安心して確保されるからである。
本田宗一郎氏も夕方の仕事が終わった後、エンジンの研究をしたそうだ。すなわち、当たり前の8時間労働は、当たり前の収入、生活のための収入を得るための労働であり、人並みでしかない。人より、苦労した分、人より多くを経験した分、実力が向上したり、結果的に仕事が面白くなってくる。
単に、労働時間を拘束され、言われることを作業する。仕事ではない作業の連続は面白くないし、向上しない。代休もあった上で実力向上できるシステム、何とか作れないものかと、悩んでしまう。