ある中間管理職が、右腕とも言える部下に対して、仕事のペースが遅いことを指摘した。指摘された部下は、「遊んでる訳じゃないよ。」と噛みついた。
「あんたみたいな手抜き仕事をすれば早いけど、自分はちゃんとやってるから時間が掛かるんだよ。」というのである。その一例として、弊社で施工している食品倉庫のゴキブリの調査用トラップを大きな袋にたくさん持ち帰ってきた。

このゴキブリの生息調査用トラップというのは、約10㎝角ぐらいの粘着シートで、これを食品倉庫の随所に設置しておくのである。ここで、少々の説明が必要となります。気長にお付き合い下さい。
まず、弊社はネズミ専門の会社であり、原則としてゴキブリは施工しない。しかし、この食品倉庫とファーストフード・チェーン店、そして、居酒屋チェーン店の3社だけ、弊社でゴキブリも施工している。特殊な経緯があったが、それは省略させて頂きます。

「見ろよ。この日付欄は何のためにあるんだ。日付が一杯になったら、取り替えるためでしょ。こんな余白部分にどんどん日付を付けて、裏側にも書くつもりでいるの?」と交換せずに日付だけを書き加えている上司を手抜き仕事をしていると非難した。

そこで、私が割って入り、次のような解説をした。「おい、○○君、以前にゴキブリ指数の話をしたことがあるけど、覚えていますか。」すると、「覚えていません。」と回答してきた。

そこで、続けて説明した。
例えば、50日間で5匹の捕獲があったとすれば、10日間に1匹程度の捕獲があったのと同じである。すなわち、10日間のうち、9日間はゴキブリを見なかったということであり、極めて良好な状態として駆除業界の業界団体が定める目標値なのである。
ところが弊社が施工しているこの食品倉庫は、過去3年間にわたって、1匹だけ個別宅配の容器に混入があったので、1095日で1匹となる。すなわち、飛来したと考えられ、生息はない状態が続いていることになる。

通常の飲食店で通常の駆除会社の場合、6箇所の日付欄というのは、毎月1回の施工としたら6ヶ月間ということになる。180日間だから18匹捕獲されても良好であると業界団体では判断するわけで、よって、同じ粘着シートをホコリが付くなど粘着力が落ちない限り、ずーと捕獲もなく使用できていることは自慢できるレベル話であり、他社と同じように6カ月間で交換する必要性はない。と説明した。
そこで、結果的に日付欄を18箇所記入できるように、1年半にわたって捕獲がないことを立証できる記入欄を貼り付けることで落ち着いた。
ケンカしても業務改善でまとめてしまい上司の1本勝ち。