福島原発の報道については、後日改めて触れるとして、チェルノブイリ原発の問題について考察してみたい。
チェルノブイリ原発の事故から4年目に現地入りした「原発事故医療協力調査会」のメンバーとして参加された、長崎医大の長瀧重信博士は、次のように述べている。「住民の放射線に対する不安や恐怖はまさにパニックと言うべき状態であった。」その恐怖と不安と混乱に陥れた一番の原因は、「死者数数万人」という根拠のない外国の報道機関である。
当日の外国の報道機関は、ほとんど例外なく、「死者数万人」と報道している。日本の各社も異口同音だ。
チェルノブイリ原発事故から20年目に、WHO(世界保健機関)やIAEA(国際原子力機関)とUNOP(国際連合開発計画)など、8つの国際機関と被害を受ける3共和国が、合同で被害状況を発表している。そして、25年目の今年、国際科学委員会は、次のように発表している。
原発職員と救急隊員では、134人が高線量放射線被ばくを受け、その結果、急性放射線障害を示し、そのうちの28人が死亡した。
134人の中、19名が2006年までに死亡しているが、原因が放射線被ばくに関連するものではない。
汚染除去作業員は24万人で、現在までに高線量の被ばく者に白血病と白内障が増加している傾向が認められる以外は、放射線被ばくによる被害は認められない。
放射性ヨウ素で汚染された牛乳により甲状腺に大量の被ばくをし、2005年までに15人が亡くなっている。しかしながら、一般公衆の中で被ばくに起因するその他の健康被害を示す説得力のある証拠はない・・・という。
「死者数が数万人」という報道が、どれほどのパニックを生み出したのか、報道機関の責任とは何なのか。20年後に正確なことが把握できたのかと考えれば、これも正しいが、当時何の根拠もない、一部の知識人らしき人々の個人的な見解を報道機関が煽った責任は、免れないと考える。福島原発も同様の問題を内在している。