先日、あるお宅に現地調査に伺った時、「殺鼠剤を使うのですか。」と聞かれた。「使ってならない食品工場や使用禁止の規定のあるビルなどでは使用しませんが、禁止されなければ使用するのが一般的ですが。」と答えると、「殺鼠剤を使用しないで施工できませんか。」と聞き返されたので、「物理的な防除の方法などもありますが、短期間で成果を上げようとすると難しいですよ。」と答えると、お嬢様が「他社にも見積もりのために来てもらいましたが、殺鼠剤を使用しないで、天井裏や床下に粘着シートを敷き詰めて、捕獲するので安全です。」と言われましたが、とのことだった。
「粘着シートで捕獲できるのは、人間で言うと小学生ぐらいまでで、それ以上になると学習してしまって、避けて通るようになりますよ。」と説明した。
すると、お父さんが、「確かに自分でもドラッグストアで買ってきて敷いているけど、大きいのは捕まらないで、子ネズミばかりだね。」と言ってきました。
私は、「ひとつお尋ねですが、粘着シートを敷き詰めて、毎月お伺いして、良かったですね。●匹捕まりました。また、来月も伺います、というように毎月ずーーと付き合い続けるのですか。業者にとっては定期収入になって良いと思いますが、長いうちにどれだけ支払い続けるお考えですか。」と聞いてみた。
確かに古いお宅で、増改築を何回も重ねていて、床面だけでも何回も段差を感じるぐらいの家、室内には荷物ばかりで、施工するのも大変で、業者泣かせなのは理解できる。しかし、ネズミは居なくなりません。と言い切ってしまって、素人でもできるような粘着シートの敷き込みを続ければ、出入りの数に比例して、≪尿の道=フェロモンの道≫の付着し、近隣のネズミ達を誘ってしまう原因にもなるから、早期に駆除しなければ大変なことになる。
それなのに、「ネズミは居なくなりません。その上、毎月お伺いします。」というシステムで仕事を取ろうとする業者、いったいネズミを止める気があるのか、と問い質したくなる。
殺鼠剤を使用しないことが、いかにも安全なことのように説明する。日本の薬事法と海外の薬事法の違いを認識して言っているのだろうか。
諸外国の場合、劇薬や毒薬指定の強烈な薬が殺鼠剤として使用されています。しかし、日本の場合には、薬事法により、医師の処方する医療用薬品と一般用(大衆薬)薬品がある。医師の処方する薬のおよそ半分ぐらいの成分で一般用薬品は作られているが、それよりももっと効き目の弱い薬で、医薬部外品という薬がある。殺鼠剤はこの範疇に入る。しかも厚生省薬務局が40年ほど前に出した通達で、「殺鼠剤には、劇薬や毒物は使用してはならない。」と規定されている。だから、外国では使用できる薬品が、日本では製造すら認められていないし、日本はそんな薬事法の規定により、弱い薬を長期間に渡って使用してきているので、最近では殺鼠剤を食べ続けても死なない抵抗性のあるスーパーラットが出現してしまっている。海外では、スーパーラットを抑え込める薬も次々に承認されているのに、我が国では使用できない。
薬は使用しない方が良い、という考え方はイメージとしてはよく理解できますが、実際には各種の感染症が優秀なワクチンや薬品で抑え込めるようになったように、使用する濃度や使用制限を厳格に守って使用すれば、ダニだらけの家に長期間住まなくても済むことになると考えるのは私だけでしょうか。
私の本音としては、殺鼠剤の喫食率の良い処方のできない会社が、殺鼠剤の否定を声高にしているように思われます。
ネズミの味覚は大変に優秀で、250ppbという、すなわち、10億分の250gという超微量でも化学物質を感じ取ることができるのに、その4000倍の濃度にあたる殺鼠剤を平気で与え、喫食しないと悩んでいる業者がいるのです。
だから、いかにしてネズミに食べさせるか、その技術開発が駆除業者におけるケミカル競争だと考えておりますが、その開発能力のない業者が、殺鼠剤を頭から否定していると思われてなりません。
殺鼠剤で死んだら悪臭の原因になるから使用禁止。最近よく聞きますが、≪クマネズミ≫など平均寿命は約2年間しかありませんから、24匹のネズミが生息していれば、毎月1匹は死亡する比率であり、どれが殺鼠剤による死で、どれが自然死なのか、解剖したり検査したりしてから、言っているのでしょうか。
止められない業者の定期収入の確保術なんて考えるのは、間違いでしょうか。