午前1時20分頃、事務所で居酒屋の作業報告書を書いていると、裏口の資材庫の鍵が開く音がした。何者かと、そっと事務所から通じる裏口の方向を見ると、社員が粘着シートを慌しく持ち出そうとしている。制服でなく普段着であることから、「どうしたの。」と聞くと、「ネズミが出たらしいですよ。」というのである。「君のうちか。」と聞き返すと、「いや、社長のうちですよ。」というのである。思わずジョークで、「そんじゃ怖くて帰れないから、絶対に捕獲しろよ。」とゲキを飛ばしてみたが、寝ていた社員が出てきてくれているのだから、私が参戦しないわけにはいかないから、「そんな20枚ぐらいの粘着シートじゃ足りないよ。」と言いながら、もう20枚ほど持って後を追った。

 すると、節電で2階のベランダの窓を網戸にして、しっかり閉めずに若干開いていたようで、そっちの方向に逃げていくのを見た。という子供の証言から、ひとまず安心したが、それでもどこかにいる可能性もあることから、室内に粘着シートを敷き込むことにして、居れば明日の朝には、捕まっている可能性が高いと考えた。

 社員曰く「こんなふうに開けていると、ネズミが出入りしますよ。」と言った。すると家内が、「じゃ保健所か役所に行って、ネズミ退治の薬をもらって来ないといけない。」というのである。すると、社員が「分かってないな。そんな役所の殺鼠剤を食べるようだったら、会社は倒産してますよ。まったく食べないっていうことを知らないのですか。」と呆れられていた。

 敷き込みをもって終了し、早く帰りたい社員の気持ちも分かったし、私の残務があったので追跡はしなかった。

 しかし、事務所に戻って冷静に考えてみると、事務所にいて仕事をしている私を呼び出すこともなく、寝ている社員を深夜に呼び出すのも横暴だけれど、まったくアテにされていないのも改めて実感した。優秀な社員に囲まれていて幸せなのかもしれない。最近、うつ病が怖い今日この頃。