先般、都内の某所の高級住宅地にある、歯科の先生のご自宅にてネズミが出没するようになったから、駆除しに来て下さい。とのご依頼を頂いた。この先生の歯科医院のネズミ駆除を随分以前に施工させて頂いた。そんなご縁で、今回は2ヶ月前ぐらいから様子がおかしいことに気付いたとのことで、何でもお隣のアパートを解体してからのようです。とのことだった。
 お伺いして、対応された奥様によると、あと2ヶ月で引越し先のマンションが出来上がるのです。ですから、2ヶ月間で駆除を終わらせて下さい。とのことだった。奥様曰く、「去るのに、解体したらネズミが出たというのでは、始末が悪いですよね。世間様に申し訳ないし。」とおっしゃったのです。
<始末>とか、<世間様に>という言葉、この奥様の気品とバランスが取れていて、不自然な響きがない。それにしても、<始末>という言葉、聞かせて差し上げたいそんな人々が多くなったように思います。食べ<ぱなし>、散らかし<ぱなし>、ホッタラカシ<ぱなし>などというのが多くなったように思います。
 また、記者会見などで見ていると、社員の起こした刑事事件などに対して、社長などが記者会見で、「世間様をお騒がせして、誠に申し訳ないと存じます。」などと発言しているが、アメリカ人などは到底理解できない。世間様ってダレですか? 悪いのは社員で、社長悪くないのに、なぜ誤るのか?
 これが日本の文化だと思った。

 立つ鳥跡を濁さず、というが、引越しされるのに、世間様に申し訳ないし、始末するのは当然のことです。という奥様の言葉、言い方、表情、何だか久しぶりに本物の日本人に出会ったような感覚でした。

 バレンタインデーが近づくと、あのピアノの先生のうちの娘さんの部屋、8帖間が足の踏み場もない状態で、IHクッキングで彼氏のために今年もチョコレートを溶かしたり、固めたり、チップを飾ったり、一生懸命なのですが、その部屋がチョコレートのカスが散らかりっ<ぱなし>であり、<始末>などという言葉ご存じないのではなかろうか、始末に負えないと言えば、どうやって負うの? と聞かれそうな気配さえする。
 世間体を気にして犯罪者は近隣の目を気にして生活すると聞きますが、アメリカでは性犯罪者など再発の可能性の高い犯罪者については、地域住民に情報を提供し、地域で再発防止するように近隣の人々が警戒して第二第三の事件の発生を抑制するそうです。
 ため息をつきながら、このブログの原稿の流れなどを組み立てながら、我が家に戻ってみると、玄関の靴は、散らかり<ぱなし>でした。あぁーア、ため息ひとつです。