弊社には、チュウ太郎の母親と本人の父親が兄弟という関係、すなわち、いとこに当る者(以下、A君)が社員として働いていました。このB君同業の駆除会社に転職すると聞いておりました。
 そのA君と、弊社に今も勤務しているB君のふたりが担当した建物で、1階が居酒屋さんで、1階の奥と上の階がご自宅という物件の娘さんから、日程の変更を希望するという電話がありました。
 「3年前に施工してもらった、○○ですが、今度きてもらえるという点検の日が急用で都合が悪くなったので、変更してもらいたいのですが、」という電話でした。
 「いいえ、弊社ではお宅にお伺いする日程は組んでいないので、何かの間違いではないですか。」と聞き返しました。
 「いいえ、間違いなくお宅ですよ。だって私がねずみ家さんですよね。と確認したら、そうです。そうです。と2回返事しましたから、間違いなくお宅の社員ですよ。」というのです。
 そのうえ、「3年前に施工させて頂きましたよね。その時のお渡しした写真も出して置いてください。当時のものと比較しますので。」と言っていたから、施工したことを知っていて、写真を撮影して渡していることも知っている、そのうえ、ねずみ家さんですよね。と確認したらそうです。そうです。というのだから、間違いないでしょう。」とおっしゃるのです。

 そして、「軽自動車に乗ってきた人だった。」というのです。因みに現在も在籍しているB君は、運転免許がなく運転できないので、そうなると、当時のことを知っているのは、A君しかいない。ということになりました。
 先方が所轄の荒川警察署に、「他の会社の名前を語って、点検にくると言っているが、当時施工した会社は関係ないとのことで、誰だかわからないけど、よその会社名を名乗るというのはおかしいではないか。」と言われ、警察としても刑事課なのか、生活安全課なのか、どこの担当かと迷っているうちに、明日じゃしょうがないから、各課から何人かずつ出して、やってくるという容疑者の身柄を押さえようということになりました。
 警察から電話連絡があって、担当の刑事さんから「当時の仕事の内容を確認できるものを持って大至急来てください。」と言われ、当時の作業日報を探しましたが、どうしても見つからない2冊のうちの1冊がそれで、結果的にB君が覚えている範囲で、業務内容を確認し警察署に行って事情聴取され、被害届けの手続きなどについて説明を受けました。
 私としては、従兄弟が逮捕でもされたら大変なことだと思って、本人と連絡を取ろうと考えておりましたが、刑事さんから会ってもいけない、電話してもいけない、見えるところにいてもいけない、だから、本人の身柄を確保する時には、この建物も当然なら周囲に来てもいけないので、自宅に居て下さい。と厳重な注意を受けました。
 帰宅し、警察署長宛に上申書を提出し、A君はそんな悪いことをする人間ではないと思います。との趣旨の書面も提出しましたが、刑事さん達は、ねずみ家だと名乗っていること、3年前に施工していること、写真を撮影して渡していることを知っていること、どれをとっても他には容疑者はいないし、実行犯とは別に裏で指図している可能性もあるので、慎重に操作しますから、という犯人だという断定的な見解しかありませんでした。
 この一件から数日後に、A君の亡くなった父親の法事があり、このような事件が発生するとは思っていなかった私は出席の返事を出していましたが、刑事さんからは出席を見合わせて下さい。と言われました。「会ってもいけない。話してもいけない。電話してもいけない。」という厳しい制限と同様の返事が来ると思っていましたが、私は内緒で出席し、本人とは挨拶もせず、離れた場所に座って法事を済ませ、その後の会食を辞して帰ろうとタクシーを拾うために車道を歩いていたら、後ろからA君が走ってきたので、簡単にそっけなく挨拶するだけに止めました。
 この事件、横浜に営業所がある会社で、3年前に当該建物に行って見積もりをしたところ、約90万円といわれ、弊社に見積もり依頼してみたら、約半額といわれ、直前にドタキャンをした会社だったそうです。その解約になったことを知らない女性のオペレーターがデータの入力ミスをして、施工したと処理したようです。
 一方、そのお宅のお母さんが、3年前に施工したと聞いて、ねずみ家さんですよね。と確認したところ、そうです。と答えたのは、八百屋、魚屋というのと同様にネズミを駆除する会社の人ですよね。という確認と誤認し、そうです。と答えたとのことでした。
 背後関係もなく、従兄弟も無事だったようで、ホッとしている状況です。それにしても、長期間の捜査活動、所轄の警察署におかれましたは、多数の方々にご努力頂いたことに深謝申し上げる次第です。