総ヒノキの本格的な住宅、何しろ柱の太さが違う、まるで神社かお寺みたい。天井の高さもお寺の本道と言ったら大袈裟かも知れないが、普通のうちではないことだけは間違いない。その家のご主人が、「徹底的に探して、一匹残らず追い出し、完全に駆除し、二度と入って来ないようにしてほしい。」とおっしゃったので、スタッフは気合が入っていた。
1階奥の日本間にある床の間に、超有名画家(私でも知っている)の油絵が入った段ボール箱が立て掛けてあったが、その裏側にピーナッツの山があった。ネズミが持ち込んで隠しているのである。ネズミの習性で、食べ物を安全なところに備蓄することがある。その家のご主人はピーナッツが大好きで、それもバターピーナッツのように皮が剥かれているとダメで、殻付が良いとのことで、大きな袋で買ってきては、テーブルの上において、ポリポリやりながら、テレビを見ているそうだ。
毎日のように少しずつ、盗んでいるネズミも利口だが、床の間の壁際に山と詰まれたピーナッツには驚いていた。
商売柄、天井裏のどこに≪巣≫を作っているのか、見当を付けながら歩く癖がありますが、この家の天井の高さが部屋ごとに微妙に違うのが気になっていた。
そして、2階のある部屋を見ていて、どうも床面が違うと感じて、カーペットをはがしてみると、床下収納のようなフタがあったので開けてみたら驚いた。日本刀、金の延べ板、よく分からない英語の書類、こんなの見つけちゃったのは初めてである。
すると、一歩後から部屋に入ってきたご主人が、「まいったなぁ」と言ったまま、顔が真っ赤になり、「そんなところにはネズミはいないでしょう」と言いながらフタを慌てて閉めていた。
後日、お見積書をお送りしたところ、「あんたの会社に頼むしかないだろう。誰も分からないあの部屋を見つけるぐらいだから、ネズミも見つけられるだろう。」と言ってご評価いただき、ご用命頂くことができた。
それにしても、あるところにはあるものだ。とつくづく思いました。
それにしても、ネズミ達の鑑定眼は大したものだ。ヒノキの材木だけ、ガリガリとよく齧っている。家主さんが落胆するのも良く分かる。材木の良し悪しはネズミに聞くと良い。