先日、チームリーダーA君以下5名で、あるビジネス・ホテルの現場に行った。
この現場、現地調査は2カ月ほど前にしたものの、そのままオーダーがなくて、しばらくした後に、オーダーを頂いた。
その間に、1人の新入社員が入ったので、5名のうちのひとりは、その新人を同伴させた。

「さぁ、君ならどうする。まず、調査してみようか。」と切り出して、新人君は建物の周囲などを見て回った。
その日、客室は全館満室で拝見できなかったので、現地調査の時の状況を説明した。

給排水やガス管など、すべての穴という穴は、ビジネス・ホテルのオーナーご自身が全部閉鎖している。
その上、隣地境界線の部分の地面も全部コンクリートを打設して、掘る余地もない。各階の外壁も異常はない。屋上にもなにひとつ問題がない。
新入社員君は、困った顔をしていた。
何しろ、ビジネス・ホテルの経営者ご自身が、粘着シートをまとめ買いしているし、何社も調査・見積もりをさせて頂き、その度に侵入口等を学習したのではないかと思われる節がある。そして、他社もなんやかんや言うものの侵入口が分からないようだ。

新入社員君が、侵入口がどうしても分からない。「どこにあるのですか。」と聞いてきたので、「すぐに教えてしまっては、君は伸びなくなってしまう。もう少し時間を掛けて説明し、考えてみようか。」と答えながら、ビル・オーナーから設計図面を借り、新入社員君に説明しながら見せた。」すると、「わぁー。こんなものまで読めないと仕事できないんですか。」と聞いてきた。
「そうなんだよね。簡単な住宅や小さい飲食店などを施工していれば、ほぼ問題ないけれど、この規模の建物になると図面が読めないと施工できないね。」と答えた。
このビジネス・ホテルも、過去に何社もが仕事して、種々雑多な方法でねずみの侵入口を閉鎖している。
その仕事の内容を見て、オーナーご自身が素人でもできると考えたのであろう。
実際のところ、素人がやるような仕事しかしていないプロが多い。
そして、そう言う業者は、気が付くとデキもしない大形物件や特殊な建物まで手を出して、信用を失っている。
私は、こういう建物が大好きだけど、新人君は3日後に辞表を出してきた。
図面は見せるべきではなかったかもしれないと猛省している。