大阪シリーズの最終回。来阪すると、決まってタクシーを多用する。およその方角は理解しているが、一方通行の規制など知らないし、環状線もどこで降りて良いのか、迷っているうちに、すぐ一周してしまうし、大阪のドライバーの反射神経にはついていけないので、結果はタクシーを多用する。真夏のエアコンは有り難いし、何しろ5,000円以上は半額がうれしい。
「最近の景気はどうですか。」と必ず聞くことにしている。なぜなら、経済学部出身の私は大学の卒業間際の時に、教授から言われた一言を忘れていない。景気動向は学者より、もっと正確に当てる人々がいる、というのである。人の動きはタクシードライバーに、モノの動きはトラックドライバーか渋滞情報に、それぞれ確認すれば景気動向は正確に把握できる、というのである。だから、タクシーに乗れば必ず聞くことにしている。
「年末年始は結構仕事させてもらいましたよ。」という肯定的な人から、「何が景気浮揚だ。消費税なんかトンデモナイ。」と共産党のパンフレットのような人もいる。だけど、共通しているのは、250キロ規制のこと。これに対する不満は相当なものだ。
従前から、5,000円超えると半額などという、全国的に見ても過激な価格競争の煽りで、事故率が高かったそうだ。〔本当かどうか正確なデータを見たことはないが〕
そこで、お上から規制が掛かった。営業所を出庫する時から、戻ってきた時までを250キロ以内にしなければならない。という規制が強化され、違反すると始末書であり、重なると営業所の他の車にも迷惑を掛け連帯責任を問われるというのである。
だから、運転者さんは、深夜の長距離のお客様を喜べない場合が増えたそうな。「天理行ってや。」「あきまへんな。距離が走れませんねん。」と乗車拒否するそうだ。規制緩和の時代に規制し、してはならない乗車拒否を発生させ、それでも安全を最優先させる。という大義名分は理解できなくもないが、規制緩和のやり過ぎで、一気に車両を増やしたために、1日当り3万円の売り上げがやっとになり、生活が厳しくなったそうだ。
タクシー運転手さんだけの話を代弁する気もない。過激な価格競争は、大阪固有のエネルギーかも知れないが、それにしても、規制やルールの変更がどこまで影響するのか、机の上だけでは理解できていないのではないかという、利用者の実感もあるように思われる。増車し、減車し,距離数規制し、演繹法だけでは片手落ちであり、細かい事象から帰納的に考察する必要性を痛感し、大阪を後にした。