最近、ある方の遺書を読むという機会に遭遇した。
その中に書かれていた内容で、「住宅ローンは団体生命保険で残債が支払われるので問題ない。自分が自殺すれば、生命保険金が入ることで、家族に対して多少なりとも役にたてる。」というのである。

このようなことを考えるに至るまでには、どれほどの経済的困窮や精神的苦痛があったのか、社会的な動物としての行き詰まりを感じられたのか、察するに余りあるように思われる。

住宅ローンを銀行などが設定する場合、リスクヘッジとして借り入れた本人に万が一のことがあっても担保できるように、当然のリスクヘッジとして団体生命保険を掛けるし、このことは理解できる。また、生命保険も当然のことで理解できる。社会制度として何も間違っていない。

自らの死と最後の家族への思いという意味も、痛みを感じるほど理解できる。だけど共感できない。

死を覚悟した人の痛みや苦痛など理解できず、ただ単に自殺は悪いこと、などと固定概念を持っている、そんな単純さが自分の中にありそうな気もする。

しかし、追いつめられた人が、保険があるから、家族が楽できるから、と死を選択してしまうことがあるのではなかろうか。
保険制度が自殺の追い風になっていなければ良い、と考えてしまうのは私だけであろうか。