私の父の場合である。
前立腺がんと診断された。12年ほど前のこと。前立腺に関しては、遺伝性が高いと聞き、息子の私も警戒しなければならないとがっかりしていた。

12年前の大学病院の病理学(顕微鏡で判断する分野?)の先生の話では、「おとなしい部類のガンで10年間は、悪さはしないと思います。」当時、78歳だった父は、まさかこれから10年間は生きていないだろうから、という理由で手術をせず、おとなしいと診断された前立腺がんと付き合うことにした。
しかし、先生の診断では、手術をしなくても、ホルモン療法と放射線治療は実施するものと思っておられたそうだ。しかし、私の父は、その両方の治療もせず、民間療法の道を選んだ。
外国の大学で研究された方法で、日本では厚生省が認めていないので、ここでは明記することを控えたいが、NHKでも放送されたことがあるらしい。その方法を用いたり、温泉療法を取り入れたり、納豆に数種類の体に良さそうなものを混ぜて、自分自身の特製納豆を毎朝食べたり、色々とチャレンジしてみたそうで、何の効果があったのか、本人も分からないそうだが、前立腺がんが消えてしまったこと、その後の経過観察でも再発していないこと、これだけは間違いがない。

現在90歳になっているが、すこぶる元気で海外旅行したり、自分でハンドルを握ってドライブしたり、何しろ自由気ままに生きている。前立腺はイヤだけど、あの自由気ままは遺伝して欲しいものだ。

先般も外科の診察に同行した。ちょっと耳が遠くなってきたためである。そこで驚いた。専門医の先生は、良くなって改善した父の病状など、「良かったですね。不思議だよね。」の二言だけで、何も興味がないようだ。
悪い患者が廊下にたくさん待っているから、良くなった父に付き合っている時間がないのだろうが、ガンを消す方法を研究し実践し続けた父と共同研究するぐらいのヒマがないと、ガン治療に明日はない、少なくとも廊下の患者さんが減ることはない。なんちゃってね。

外来ではない専門家の先生が日夜研究されていると思うけれど、何が効果的なのか、色々やってしまったから分からないという父の見解ではなく、効果的な何かを付き止めておいてほしいものだ。前立腺がんの相続(予定)人より。