先般、一流ハウスメーカーの建てた3階建てのアパート(共同住宅)の202号室から現地調査の依頼を頂いた。
行ってみると、ハウスメーカーの建設の担当者が2名。後から系列の管理会社の担当者の女性がひとり来られた。
インターフォンを押してお会いすると、30歳前後のご主人様と奥様に、小さいお子さんがふたりというご家族でした。
「天井裏で音がする。と言うことからお問い合せ頂いたようですが、」と切り出すと、お宅の会社に調査依頼した翌日に、捕獲できました。とのことで、デジタルカメラで拝見させて頂きました。

間違いなく、≪ハツカネズミ≫でした。この≪ハツカネズミ≫というのは体長が6センチぐらいで成獣という小さいタイプのネズミです。そのことを告げると、「どこから入ったのでしょうか。」と早速、核心に触れる質問である。
すると、間髪を入れず、「どこも侵入経路になる穴などないはずだが。」と建設した担当者は、否定的な見解を言う。弊社が返事をするまでもなく、賃貸人のご主人が、「先日も来られて殺鼠剤を置いて帰られたけど、頭から玄関ドアから侵入したと言い張り、穴などどこもないという立場で話されたのでは、解決策を見い出す姿勢もなく、責任逃れとしか考えられない。それに、あの日は雪が降っていた日で、そんな日に2階の廊下まで上がってきて、私が出入りした瞬間に入り込んだとでも言うのか。」とご立腹のご様子。
賃貸人は、室内にてネズミを捕獲したことで、単なる被害者の立場であり、被害者は立場的に強くなるのが最近の傾向である。
そして、「どうなんですか。ねずみ家さん、どこから入ったのですか。」と再度質問された。まだ、室内各所を見ているわけでもないので、「もう少しお待ち下さい。」と言いながら、室内各所を見て回った。
そして、キッチンの僅かな15ミリ程度の隙間を見つけて、ここから侵入した可能性が高い、と結論付け、建設担当者のお二人に、コーキングで埋めてもらって完了となった。
それでも、建設担当者は治まらない。何しろ、あってはならない。という前提から始まってしまう。被害者は何とかしろ、と要求する。
問題の本質は、侵入経路を探し出し、今後の再発を止めれば良いのに、探そうともしない姿勢とか、否定したい姿勢が見えてくる。管理会社は、何とかしておさめたいという思考回路のようだ。個々の立場、個々の主張が見せつけられるほどモロダシ状態である。
私は言った。つきっきりで目撃していたわけでもなく、可能性をひとつずつ潰しましょう。だから、今日は再発しないように、隙間を埋めましょう、そして、経過観察しましょう。という落とし所に軟着陸したのだ。
ドアの外に出ると、建設会社の担当者は、「室内に出なければ、賃貸人のスペースを犯していないことになりますよね。」と言ってくる。私は「天井裏などの構造躯体の中に入っただけでも、天井からバタバタと音がして寝られない方もありますよ。」と答えると、「賃貸人の主張できる範囲について、どんなものでしょうか。」と聞いてきた。「私は、裁判官ではないから、判断する立場にはありません。私は、お客様が安心して生活できるようにすること、不快感がないようにすること、ただそれだけです。」と答えた。
人間は、立場で話をすると、ガチンコ勝負になって、ぶつかってしまう。理想を一緒に求めれば、一緒に解決策を見い出せる。なんていうことを考えさせられた。